ネットワークコンピューティング

1. URL
2. 担当教員
3. ネットワークに関する疑問
4. 講義目的
5. 到達目標
6. 授業方法
7. 成績評価
8. スケジュール
9. 大崎が担当する科目に共通の連絡事項・アドバイス
10. LAN の構成要素・通信プロトコル
11. 無線 LAN、VLAN (仮想 LAN)
12. インターネットの概要、TCP/IP
13. IP プロトコル (1)
14. IP プロトコル (2)
15. 前半の総復習
16. 授業中試験について
17. TCP プロトコル (1)
18. TCP プロトコル (2)
19. インターネットの要素技術 (経路制御)
20. インターネットサービス (名前解決)
21. DHCP、ネットワークアドレス変換
22. HTTP
23. 後半の総復習

IP プロトコル (1)

授業の流れ・チーム分けの方針・態度目標

2025/09/24 のものと同じ。

https://lsnl.jp/~ohsaki/lecture/netcomp/2025/#10-1

内容目標

- OSI 参照モデルとは何かを他人に説明できるようになる。

- IP では、何ができて、何ができないかを他人に説明できるようになる。

- パケット交換ネットワークの基本的な特性を数理的に分析できるようになる。

テキスト

https://lsnl.jp/~ohsaki/lecture/netcomp/2025/priv/04.pdf

課題

課題 1

OSI 参照モデル (OSI reference model) を説明する以下の文について、 下記の問に答えよ。

A seven-layer structure designed to describe computer network [ ア ] and the way that data passes through them. This model was developed by the ISO in 1978 to clearly define the [ イ ] in multivendor networks, and to provide users of those networks with conceptual [ ウ ] in the construction of such networks. See also: International Organization for Standardization. (RFC 1392)

(1) 1 層〜7 層の名称を答えよ。

(2) 空欄 [ ア ]〜[ ウ ] にあてはまる最も適切な用語を以下から選べ。

Internet、 architectures、 documents、 guidelines、 interfaces、 protocols、 servers、 softwares、 specifications

課題 2

Internet Protocol (IP, IPv4) を説明する以下の文について、 下記の問いに答えよ。

The Internet Protocol (version 4), defined in RFC 791, is the network layer for the TCP/IP Protocol Suite. It is a connectionless, best-effort packet switching protocol. See also: packet switching, TCP/IP Protocol Suite, Internet Protocol Version 6. (RFC 1983)

(1) IPv4 が connectionless である理由を、その通信方式から説明せよ。

(2) IPv4 が best-effort である理由を、その通信方式から説明せよ。

課題 3

IP ネットワークはベストエフォート型であるため、 送信側ホストが送出したパケットが必ずしも宛先ホストに届くとは限らない。

IP ネットワークのみを用いて、 「送信側ホストが送出したパケットが宛先ホストに到着したか」を確実に知る方法はあるか。 あるならその方法を答えよ。 ないなら、 その理由を答えよ。

課題 4

パケット交換ネットワーク上で、 送信側ホストから宛先ホストまで単一のパケットを正常に転送するまでの時間の期待値 E[D] を求めたい。 ネットワーク中のパケット棄却率を p、 送信側ホストから宛先ホストまでの平均遅延を d [s] とする。 送信側ホストは、 パケット送出から T [s] 以内に宛先ホストからの ACK を受信しなければ同一パケットを再送するとする。

(1) k 回目のパケット送信で始めて宛先ホストにパケットが到着する確率 q_k を答えよ。

(2) E[D] を求めよ。

略解

課題 1

(1) 物理層、 データリンク層、 ネットワーク層、 トランスポート層、 セッション層、 プレゼンテーション層、 アプリケーション層

(2) ア: architectures、イ: interfaces、ウ: guidelines

課題 2

(1) IP の通信方式がパケット交換方式であるから。 宛先ホストと宛先ホストの間で事前にコネクションを確立することなく、 パケットを非同期でネットワーク中に送出するため。

(2) IP の通信方式がパケット交換方式であるから。 中継ノード (ルータ) は受信したパケットをバケツリレー形式で隣接するルータに中継する。 パケットはルータで待たされるかもしれないし、 廃棄されるかもしれないし、 バケツリレーによる中継が間違うかもしれないから。

課題 3

ない。

送信側ホストが、送出したパケットが宛先ホストに到着したかを知る

ことは

宛先ホストが、送信側ホストに対してパケットを受信できたかを伝える

ことと同じである (宛先ホスト→送信側ホストの逆方向の通信)。 順方向も逆方向もどちらも信頼性のない通信チャネルであるため、 「確実に知る」ことはできない。

※ なお、課題 4 のように、再送を繰り返すことによって情報伝送の成功確率 を上げることはできる (ただし、確率 1 にはできない)。

課題 4

(1) 過去 k - 1 回のパケット送信が失敗し、 次のパケット送信が成功する確率であるから

q_k = p^(k - 1) (1 - p)

(2) k 回目のパケット送信で始めて宛先ホストにパケットが到着した時の遅延時間 D_k は、 k - 1 回のタイムアウト時間 T [s] と、 送信側ホストから宛先ホストまでの片方向遅延 d [s] の和である。

D_k = (k - 1) T + d

したがって

         ∞
E[D] =   Σ   q_k D_k
        k = 1

          p
     = ------- T + d
        1 - p

類題

類題 1

なし

類題 2

以下は ChatGPT による「普通郵便」の説明です。

普通郵便とは、日本の郵便サービスにおいて最も一般的で基本的な郵便サービスのこ
とを指します。普通郵便は、特別な速達や追跡サービスがついていない通常の郵便物
の配送方法で、手紙やはがき、小包などを送る際に利用されます。配達速度は通常の
範囲内で、特に急ぎではない郵便物に適しています。料金も他のサービスに比べて比
較的安価で、日本全国に広く対応しています。

(1) 普通郵便が connectionless である理由を、その配送方式から説明せよ。

(2) 普通郵便が best-effort である理由を、その配送方式から説明せよ。

(略解) (1) ポストに投函された郵便物を収集し、宛先ポストに投函するという (あら かじめ配送経路を確保しない) 配送方式だから。(2) ポストに投函された郵便物を人手 で収集し、宛先ポストに人手で投函するという (郵便物の破損や紛失をゼロにはできな い) 配送方式だから。

類題 3

普通郵便はベストエフォート型であるため、 送信者が送出した郵便が必ずしも受取人に届くとは限らない。

普通郵便のみを用いて、 「送信者が送出した郵便が受取人に到着したか」を確実に知る方法はあるか。 あるならその方法を答えよ。 ないなら、 その理由を答えよ。

(略解) ない。受信人が、送信者に対して郵便を受信できたかを確実に伝えられないか ら。

類題 4

いいかげんな配送業者を利用して、 あなたの自宅から田舎の親戚宅まで単一の荷物を正常に送付するまでの日数の期待値 E[D] を求めたい。 いいかげんな配送業者の荷物紛失率を p、 自宅から田舎の親戚宅までの平均運送日数を d [ 日 ] とする。 あなたは、 荷物の発送から T [ 日 ] 以内に親戚から「届いたよ」の連絡がなければ荷物を再送するとする。

(1) k 回目の荷物送出始めて親戚に荷物が到着する確率 q_k を答えよ。

(2) E[D] を求めよ。

ノート: Mathematica による数式処理

課題 4 の式は、 数式処理言語 (Mathematica) を使えば以下のように解ける。

ex.m:
(* Mathematica ではユーザ定義シンボルは小文字なので小文字を使用している *)
q[k_] := p^(k - 1) (1 - p)
d[k_] := (k - 1) t + d0
Sum[q[k] d[k], {k, 1, Infinity}] // FullSimplify

> WolframKernel <ex.m
Wolfram Language 13.0.1 Engine for Linux x86 (64-bit)
Copyright 1988-2025 Wolfram Research, Inc.

In[1]:=
In[2]:=
In[3]:=
In[4]:=
              p t
Out[4]= d0 - ------
             -1 + p

In[5]:=

レポート課題・質問・要望・コメント 2025/10/15

「レポート課題 2025/09/24」と同じ。

https://lsnl.jp/~ohsaki/lecture/netcomp/2025/#10-10

質問

- IPプロトコルとかかれている記事を見たことがあるのですが、これは変だと思います。IPはInternet Protocolの略からです。これはそういうものなのでしょうか?それともIPプロトコルという呼び方がおかしいのですか?

すばらしい言語感覚を持っていますね。IP の定義からすると変なのですが、「IP プ
ロトコル」は今では普通に使われています。

その違和感はもっともで、本来は「transfer a packet with the IP」のように言い
ます。IP protocol と言うと、「馬から落馬する」とか「頭に頭痛がある」と似たよ
うな冗長な表現になります。

しかし、IP は有名になったので、IP そのものが一つの固有名詞として使われるよう
になっています。だから、英語圏でも「transfer a packet with the IP protocol」
のような表現は普通に使われるようになっています。

- 前回の授業の内容になってしまうのですが、ホップ数の数え方が他の文献などと異なるように思ったのですが、具体的にどのような数え方をしていますか。

これも良い質問ですね。私の授業では、以下の例で、A → D を 3 ホップと数えています。

A ---- B ---- C ---- D

以下のページにおける 1-origin hop count に相当します。

Hop (networking)
https://en.wikipedia.org/wiki/Hop_(networking)

コメント

- IPの再送やタイムアウト処理について、課題4のように数理的に整理されていたが、実際のネットワークでどの程度の遅延や損失が起きるのかを体験できるシミュレーションがあると、より理解が深まりそうだと感じた。

  遅延は 10/21(火) の課題 4 で実際に測ってもらいます。パケット損失率は TCP 通
  信では直接見えませんが、UDP 等を利用すれば計測することも可能です。


[<12. インターネットの概要、TCP/IP] [>14. IP プロトコル (2)]